早稲田大学ホームカミングデーに参加
〜日本の大学のBCM(事業継続経営)提案〜



2016年10月23日
セリングビジョン株式会社
代表取締役 岡部秀也


本日、早稲田大学OB祭とも称される年に一度の卒業生の集いに参加した。この機会に日本の大学のBCM(事業継続経営)について以下、考えてみた。

《早稲田大学の稲門祭&ホームカミングデーに参加して》

紺碧の秋空のもと、早稲田大学で卒業生を迎えるホームカミングデー(大学主催)、稲門祭(校友会主催)の本日、私は、よく遊びよく学んだ政経学部の仲間たちとキャンパスに出かけた。有名なマンモス大学のため、多士済々の政治、ビジネス、文化、スポーツ、教育など各界から著名人が講演したり、もとテレビ局キャスターが大隈庭園で音楽イベント司会をしたり、自治体ごとのテント屋台があったり、女優がショップに飛び入りボランティアセールスに参加するなど盛況だった。
政経学部ビルがリニューアルして高度なICT環境も整い、グローバルな競争力を得る人財養成のディベートルームや語学教室も視察できた。
新ビル前では、日輪を浴びて応援部・チアガールによる、応援歌や校歌などが、元気はつらつと披露され、卒業生含め数百名で大合唱した。老朽ビルをリニューアルするために卒業生の寄付を募った大隈講堂や政経学部ビルには寄付をした卒業生の名前が銘盤に刻まれている。
また、以前にリニューアルした文学部の隣の「戸山キャンパス記念会堂」も建て替え中である。早稲田アリーナ建設とスポーツ振興にも卒業生、企業による財政支援に力点を置いている。
卒業生向けのサロンも拡充され、ますます大学と社会、卒業生との距離を縮めようとする姿勢も理解できた。
しかし、大学のグローカル化(国内地域活性化、国際展開化)は進んだが、懸案の医学部もまだなく、全体として卒業生の大学サポート熱は依然として強いとは言えない。
医学部がない大学は総合大学と言えないし、卒業生とのコミュニケーションパワーはまだまだ弱いため寄付金集めでは苦労していると聞いた。また新築ビルのインフラ整備だけではだめで進取の精神をもった教育カリキュラムの革新も必須の課題だろう。



(真中が再建の政経学術院ビル)(年に数回会う同級生仲間と)


《日本の大学の生き残りをかけたBCMを考える》

この中で、日本の大学の生き残りをかけたBCM(事業継続経営)を以下考えてみた。

まず文部科学省の政策。企業や国民の血税で100%財政をまかなう国立大学は、国民に理解を得るべく有用性の特色を発揮しなければならない。文科省も重い腰を上げて、
@地域貢献
A特色ある分野の教育研究
B世界で卓越した教育研究
の3類型を示し86校に選択を求めた。
財政負担の大きい研究大学の旧帝大系は、「世界」を選ぶが他は「特色」か「地域」だ。
とくに技術・工学系大学は競争力が強い分野に集中し、弱い分野は切り捨てや他大学と統合することになろう。横並び時代は終わった。
教育系大学、人文社会系大学も組織廃止や社会的要請の高い分野に転換、再編が加速化しよう。
少子高齢化、生産年齢人口が減るなかでは国立大学の財政は厳しくリストラや統合化は待ったなしだ。

一方、私立大学はどうか。国の支援が低過ぎ、授業料も高く4割が定員割れ、3割が単年度収支赤字と聞いた。しかし学生数では私立は74%と圧倒的だ。国の大学への運営費補助金は学生一人当たり国立179万円、私立15万円だが、この格差は、即刻是正すべきである。なぜなら、国立大学を継続するBCM(事業継続経営)は、私立大学出身者が経営する法人・個人の税金で半分以上が賄われているからだ。
大学の収入(税金)・支出(学生教育)考えるならば、誰が税金を払い、誰が便益を受けるのか根本的に問い直すべきだろう。
米国大学は母校のシカゴ大学を含め寄付者の中心は卒業生。サマースクールで夏場のみ通ったニューヨーク州立大学バッファロー校やハーバード大学も、州立、私立に限らず大学ファイナンスの自己資金の源泉は寄付金が大きかった。「教育の質が高く教育効果が大きければ卒業生は進んで寄付する。奨学金で学んだ卒業生は後輩のために寄付する」(もと法政大学総長清成忠男)
日本の国公立大学も、税金頼みでBCMを展開するのでなく卒業生による寄付金集めを積極的に行うべきである。

大学など研究者への補助金は、大学に配分する基盤経費(運営費交付金)と競争力ある研究者に出す補助金(科学研究費補助金)がある。
地味な分野は研究しにくい環境があるが、税金を使う限りは研究の説明責任を果たし、目利きできるスタッフを大学内に設ける必要がある。
大学の教授陣へのインセンティブとしてイノベーション推進には競争的資金の比重を高めるといい。
企業とタイアップした大学などの技術や アイデアを研究開発、実用化に資するオープンイノベーションでビジネスを早めに起こすことを目指してほしい。

「受験勉強の成績優秀者が一流の科学者になるとは限らない。自分で考える努力をし、研究仲間とのチームワークを円滑にする対話力も大切だ」(アフリカのジャングルでゴリラ研究一筋の行動派、山際寿一京都大学学長)
各大学は組織やカリキュラムの再構築をすることにより、財政を賄ってきた企業や国民への理解を得る必要がある。それには、各大学が存在感を示し、スピード改革、実行、大学姿勢の社会や卒業生への見える化、コミュニケーション力が一層大切だ。

世界で、いやアジアでもランキングの低迷が言われる日本の大学が自ら再構築する自力的アクションを期待したい。



以 上


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